2008年08月07日

チューニョと凍みイモ

ジャガイモの原産地ペルー、ボリビアあたりの中央アンデスでは、当然のことながら昔からジャガイモがよく栽培されてきました。
栽培だけでなく独特な保存法も編み出してきました。

チューニョと呼ばれるこの保存ジャガイモのことは、吉田よし子「魅力の野菜たち―そのおいしい食べ方」で知っていましたが、伊藤章治「ジャガイモの世界史―歴史を動かした「貧者のパン」 (中公新書 1930)」にも詳しく出てきます。

乾期6月頃のアンデス山地は、夜間の気温がマイナス5〜10℃にも下がりますが、日中は15℃くらいまで上昇するそうです。この激しい日夜の気温差を利用して、屋外にひろげたジャガイモを凍らせては溶かし・・・というのを数日繰り返すのだそうです。
ジャガイモの水分は分離し、芋を軽く押しただけで中から水分が押し出されるようになります。足で思う存分踏んで水分を押し出したジャガイモを再び屋外にさらし、凍らせる→溶かすを数日間繰り返すと、ジャガイモの水分は殆ど無くなり、乾燥ジャガイモができあがります。

この乾燥ジャガイモがチューニョ。

元のジャガイモの半分から1/3くらいの大きさ。軽くて10年近く保存が可能。しかも水分を押し出す時にジャガイモの有毒成分ソラニンも押し出され、いわゆるジャガイモのアクが無くなっています。
食べる時には丸一日水に漬けて戻したチューニョ(スポンジ状だそうです)の皮をむき(手でむけるとか)、適当に切ってスープや炒め物にするのだそうです。ジャガイモの歯ごたえ、粘り、味が残っているそうです。

ちなみに上記のようにして作られたチューニョと異なり、足で踏む代わりに川の流れにさらして内部の水分を押し出して作るチューニョもあり、前者は「黒いチューニョ」、後者は「白いチューニョ」と呼ばれています。「ジャガイモの世界史―歴史を動かした「貧者のパン」 (中公新書 1930)」の試食体験では、黒い方が美味しそうに書かれています。

ところで以前「美味しんぼ (80) (ビッグコミックス)」を読んだ時に、このチューニョとそっくりなものが山梨県の郷土料理に出てくるのを発見しました。

その名も凍みイモ。

山梨県鳴沢村では、ジャガイモをござの上に並べて凍り始めたら足で踏み込みます。この作業を雪が降るまで続け、雪が溶け出したら日に当てて乾燥させるのだそうです。

食べる時には、3〜5日水に漬けて戻したものを水で30分ほど煮ます。味付けはせいぜい塩くらい。もちもちとした感触と甘味があるのだとか。

細かいところは違いますが、チューニョと凍みイモは作り方、食べ方がよく似ています。

一般に離れた二つの土地AとBで似通った食の形態が存在する時、考えられるのは

・AからBに伝わった

・BからAに伝わった

・各々独自に生まれた

の三つですが、チューニョと凍みイモはどれなんでしょうね?

チューニョの古さとジャガイモ伝播の歴史を考えると、凍みイモ→チューニョはありえないのですが、逆は考えられます。
アンデスはジャガイモをこうやって保存している、こうやって食べているということを知った人が自分の村で試してみたらうまくいった、まわりも真似して、いつしかその地域に根付いてしまった・・・ということは十分にありえそう。

また、各々別個に生まれた保存法というのも考えられます。
チューニョはそれ自身独自に生まれたジャガイモ保存法でしょう(ジャガイモが世界中にひろまる前からあったのだろうから)。
でも日本でも凍み豆腐などのように凍らせて水分を除き長期保存を可能にするというテクニックが別にあるわけです。かんずり、でしたっけ?詳しくは知りませんが、唐辛子を雪の上にばらまいて甘味を出すそういうものもあるわけですよね。そういった食品加工、保存の知恵をジャガイモにも適用してみた・・・というのも十分にありえそう。

さて、本当はどっちだったんでしょう?
今は想像するしかないのですが、想像するのもまた面白いものです。

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posted by WCR管理人 at 14:38 | Comment(0) | TrackBack(0) | 食材
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