2008年10月08日

酒が飲めるか、飲めないか?

人間の食環境への適応例として、乳糖不耐だの、牛乳が飲めるか飲めないかだの、芋だけで生きていけるかだの、しばらく前にいろいろ挙げてきたのですが、もっとポピュラーな話題があったじゃないかと。
(過去記事「ミルクが飲めるか、飲めないか?」、「芋だけで生きてゆけるか?」参照)

そう、酒が飲めるか、飲めないか。

アルコール分解酵素の話です(適当な文献が無いのでネット検索からの寄せ集め情報です)。

アルコールは体内に入るとまずアセトアルデヒドに分解されます。
このアセトアルデヒドは毒性があります。だから、さらにこれを酢酸に分解するわけです。
なんですが、この分解の第一ステップと第二ステップには、それぞれ酵素がかかわっていて、この酵素の有る無しがアルコールを分解できるかどうかにかかわってきます。
両方の酵素を持っている人、一つしか持ってない人、両方とも持ってない人。
それによって酒が飲めるか、飲めないかが決まってきます。

ところが、モンゴロイドを除く世界のほぼ全ての人種は両方の酵素を持ってるんだそうです。
日本人が属するところのモンゴロイド(正確にはその一グループ)には、二つとも持ってない人とか一つしか持ってない人がうじゃうじゃ。

どうも牛乳と違って、酒はみんな飲めるものだったらしい、昔は。
ところがある時、モンゴロイドに分解酵素を持たない遺伝子が突然変異で現れて、それが受け継がれるようになったとかいう説があるのだそうです。

ここで大事なのは、そういう突然変異の遺伝子の人たちが自然淘汰されなかったということなんでしょうね。
アルコールが生きていくために必要不可欠なものだったら、酒が飲めない遺伝子を持つ人たちは生き延びることが難しく、自然淘汰されてゆくんだと思います。

なぜ、昔はみんな酒が飲めたのか?
なぜ、突然変異が起こったのか?
なぜ、突然変異の遺伝子が自然淘汰されずに残っているのか?

こっから先は、またまたワタクシの身勝手な推論、妄想ですが、

ひょっとすると、昔々みんな酒が飲めたのは、やっぱり飲めないと生きてゆけなかったからじゃないか、と。
地上の恵みを食として生存をはかってきた人間ですが、例えば食べられる果物、実などは非常に重要な食物だったでしょう。ところがこういった果物や実の旬は限られています。限られていても、保存の知恵がまだあまり無かった頃の人間は、旬も終わりになった果物でも食べざるをえなかったことが多いのではないでしょうか。熟れすぎの果物、時にはカビが生え、時には発酵します。果物の糖分は発酵すると当然お酒になります。あるいは保存を試みて、お酒になってしまったこともよくあるでしょう。お酒になっちゃったから飲めない、食べられないなんて贅沢は言えません。となると、生き延びていくためにはアルコール摂取しても平気な体質の方が有利だったわけです。

だから、たまに突然変異が起きて、酒が飲めない子どもが産まれても、あまり生き延びられなかった。自然淘汰されてしまった。
ところがなんらかの事情で、モンゴロイドに起きた突然変異は受け継がれた。おそらく酒を飲めなくても、ノンアルコールの食糧がそこそこあったからではないのか。

つい最近読んだ本に、

ヨーロッパにアルコールが強い人が多いのは、子どもの時からなんらかの形でアルコール摂取をせざるをえなかったからではないのか。

と書いてありました。

例えば、麦を貯蔵しておく、それが貯蔵中に発酵してアルコールを発生する、そういう麦でお粥なんかを作って子どもに食べさせる、なんてのが日常茶飯だった。

という理由が挙げられていました。そういえばヨーロッパは水が飲料に向かないところが多く、ワインを水代わりにすることもあると聞いたことがあります。

現代では事情がずいぶん変わってしまったでしょうが、そういう食環境が突然変異を許さなかったというのもありえそうです。

(上記の麦の発酵の話は、根岸宏邦「子どもの食事―何を食べるか、どう食べるか (中公新書)」にあったと思っていたのですが、今調べてみると該当箇所が見つかりません。いったいどの本で読んだのか?若年性アルツハイマーだったらどうしよう?)

酒が飲める、飲めないも食環境への人間の適応の一例と言ってもよさそう。

ちなみに私は完全な下戸ではないけど、あんまり量は飲めません。
おそらく酵素を一つだけ持っているタイプじゃないかと。
太古の昔に生まれていたら、さっさと自然淘汰されて、こんな戯言をうだうだと流していることもなかったんだろうな。

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