2008年10月30日

中華のスープは、どうしてあんなに薄味なのか?

昔、オットが飲茶の店に連れていってくれたことがあります。
高級な飲茶の店でいろいろ美味しくいただきましたが、どうしても慣れない、違和感が拭えないのが、中華のスープでした。

中華料理に出てくるスープは味付けが非常に薄いことが多いようです。
日本でのお店は日本人に合わせた味付けになっているところも多いのかもしれませんが、時々びっくりするほど薄い味付けのものに出くわすことがあって、これは何かの間違い?とも思うのですが、以前どこかで中華のスープは水代わりなので味付けは非常に薄いということを読んでから、そういうものなのかあ、と思うようになりました。
そういうものなのかあ・・・と思っても、舌の違和感は依然として残ります。
「スープでございます」と言って供されると、舌は自然と西洋風のスープ、日本の味噌汁、汁物の塩味を求めてしまうのです。

「水代わり」という説明に今ひとつ満足な納得感を得られないまま、漠然としたものを中華のスープに感じ続けてきたのですが、河野友美「食味往来―食べものの道 (中公文庫)」での説明に膝を打つ思いをしたのはしばらく前のこと。

中国には水が良くない地方が非常に多い、いわゆる硬水と呼ばれる石灰、カルシウムを多く含んだ水、時にはマグネシウムなんかも含んでいたりします。
そういう水をごくごく飲んでると下痢をしやすい。だから、水の硬度の高い地方では、水の中のカルシウムやマグネシウムなんかをなんとか取り除こうと努力してきたわけです。

こういった硬水を飲めるようにするための知恵の一つは蛋白質の利用です。
蛋白質はカルシウム塩やマグネシウム塩と出会うと凝固する性質があります。豆乳ににがりを加えて豆腐を作るのは、この性質を利用したものですが、硬水に対してもこの性質を利用することができます。
例えば豚骨なんかを鍋に水と一緒に放り込んでぐつぐつと煮ていると、豚骨の蛋白質成分が水のカルシウムなどと反応して凝固し、鍋の底に沈んだり、表面にアクとして浮いてきたりするのだそうです。
大鍋いっぱいに湯を沸かし、豚骨を入れて長時間ぐつぐつ煮る、時々せっせとアクをすくう・・・こうやって出来たスープはカルシウム塩が取り除かれていますから、飲んでも下痢したりすることはありません。水代わり、お茶代わりにせっせと飲むわけです。
(ちなみに蛋白質と言っても水に溶けない普通の肉の部分では役に立たないそうです。煮ているうちに水に溶け出すコラーゲンなどでないとうまくいかない。スープに骨だのすじだのコラーゲンが豊富な部分が使われるのはそういうわけなんだそうです)
逆に日本のようにのどが渇いたからといって水をごくごくというわけにはいきませんから、そういう時にもこのスープをごくごくということになります。当然あまり塩味が濃いと水の代わりとして使いづらい。

こうやってカルシウムを取り除いたスープは飲むためだけでなく、調理にも使われます。
カルシウムを多く含む硬水をそのまま調理に使うと不都合なことが多いからです。
例えば日本では普通にご飯を水を使って炊きますが、硬水でやるとカルシウム入りのご飯ができてしまいます。カルシウムをよけてお米を加水加熱するために、中国では蒸すという調理法がよく使われています。
ジャガイモなどは硬水で茹でると細胞のペクチン酸カリウムがペクチン酸カルシウムに変化してしまい、硬い組織になってしまうのだそうです。茹でれば茹でるほどゴリゴリと硬いジャガイモになる・・・というわけでジャガイモも蒸したり、スープで煮たりということになります。

と、ここまで懇切丁寧に説明されると、おおっ、ナルホド!なんです。
すごいなあ、とも思います。
硬水とか知識としては漠然とありましたが、日本で湯水のように湯水を使っているとなかなか分からない感覚です(”湯水のように使う”って国によって意味が違うんだそうですね)。
中国では水代わりにスープを飲む、と言われただけでは、スープじゃなくってお茶を飲めばいいじゃん、とどこぞの国の革命時の王妃様のような発言が出てきかねません。
でも背景にはそういう事情があったんですね。

先日、六甲のハクサリの水の話を出しました(過去記事「六甲の水、ハクサリの水」参照)。
こちらはフッ素が多い水を長期間飲用することで歯がぼろぼろになるという話。おそらく水道ができるまではなんの解決策もなく、運命、宿命を甘受せざるをえなかった例。

飲めぬなら 飲めるようにしてみせよう ホトトギス。
(無茶苦茶字余り)
と、動物の肉の余りもんをうまく利用して食の不都合を解決した例が中国のスープ。

水一つとっても、食材と人との関わりのいろんな側面が見えてくるのだなあ、と。

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posted by WCR管理人 at 14:05 | Comment(2) | TrackBack(1) | 食文化
この記事へのコメント
中華料理はどれも味が濃いので、スープは薄味なのか、と単純に思ってましたが、深い背景があるんですね、、、WCR管理人さんの博識に感動・・・。
Posted by りす美 at 2008年11月01日 06:34
いえいえ、単なる本の受け売りです。
でも、すーっとする説明に出会うとなんか嬉しくなってしまいますよね(そして人に吹聴したくなる^^;;)。
Posted by WCR管理人 at 2008年11月01日 11:43
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