世にある全てのひき方を網羅したわけではもちろんありません。手元にある文献からテキトーに拾いあさっただけですので、これ以外にもいろいろなひき方のバリエーションがあるかと思います。
あまりにもたくさんあると悩んでしまうのが我々一般人です。
いったいどれをお手本にすればいいの?
至極ごもっとも。
私もその手の疑問を両手一杯に抱えうろうろするタイプです。
幸か不幸か我が家ではお吸い物というものを殆ど作りません。だから昆布や鰹節のお出汁はもっぱら煮物用。少々(だいぶ?)出来が悪かろうが、昆布の雑味が出てようが、煮物だとそのへんさほど気にならなくなってしまいます(お吸い物に比べればの話ですが)。
記憶を辿ってみると、何かの本で昆布は洗わない、昆布は煮立たせないと読んだのがうちの昆布出汁の始まりだったような気がします(もはやそれがどの本だったのかすら覚えていません)。とりあえずそれだけは守って後はテキトーにやってきました。昆布を丸一日水に漬けておくなんてしょっちゅう。ものすごーく弱火で時間かけて加熱してみたり(粘りがすごーく出ます、おそらく雑味も)。
とても人様に昆布だしの話を披露できるような経験値はございません。
ワタクシの方がいろいろ教わりたいぐらいです。
先日ぱらぱらと辻嘉一「味覚三昧 (中公文庫BIBLIO)
一汁三菜の懐石料理をいただいた後、酒宴に移る前に箸洗と呼ばれるお吸い物をいただくのだそうです。名前のごとく、今まで使った箸を洗う、口を洗うという意味合いらしく、まあ、要するに食事から酒宴に移るにあたって、気分、味覚をリセットするものではないかと・・・懐石もお茶事のこともこれまた経験値ゼロのワタクシは勝手に想像したのでありますが、この箸洗というのはすごーく味の薄いお吸い物なんだそうです。
5人分のお吸い物のお湯、これが煮立つ直前に二センチ角の昆布を箸でつまんで入れ、五回ほどかきまわして引き上げるのだそうです。それに塩であわ〜い味をつける。昆布から香りが移るかどうか、塩味が辛うじてするかどうか、日本料理で一番味の淡いお吸い物と書いてあります。
そして、このような淡い味のお吸い物が成り立つのは、その前に味の濃い一汁三菜があったからこそ。
お吸い物でもなんでもそれ単体で旨いの不味いのが成り立つわけではない、その前後の料理の組み合わせがあって初めてこの味が旨いとかそういうことが出てくる(いや、もちろんどういう組み合わせにしても不味い代物というのはありましょうが)。というようなお話。
昆布だしのひき方、いったいどれをお手本にすればいいの?
と迷っても誰に対してもの正解がポンとあるわけではありません。
毎日料亭のご飯のようなお食事をしてらっしゃるおうちもあるやもしれません(すいません、ワタクシ、料亭のご飯に関しても経験値ゼロです。どんなもんか知らずにこういうこと書いてます)。
もっと庶民的なおかずがばんばん並ぶおうちもあるでしょう。
それぞれのおうちの晩御飯に合うお吸い物は一つではありません。
味覚の好みもあるでしょう。
昆布のくどさを嫌がる味覚では、出汁は煮立たせずに薄めにとなるかもしれません。
昆布の味がしっかり出ているのを好む場合は、少々煮立たせた方が美味しく感じるかもしれません。
使う昆布でも出汁のひき方に違いが出てくると思います。
今回昆布の種類についてもざっと調べていますが、マコンブ、リシリコンブ、ラウスコンブ、ヒダカコンブ・・・、めぼしい種類だけでも何種類かある上に、昆布は同じ種類でも生産地や浜によってずいぶん品質が変わってくるのだそうです。自分がいつも買っている昆布がどういう特徴のある昆布なのか、どうしたらこの昆布の良さをうまく引き出してやれるのか、そういうところが一般論よりも大事になってくるのかもしれません。
経済的な問題もあるでしょう。
お金に糸目をつけず食材をあがなえる高級料亭と、お財布の中身を気にする一般の家庭は違います。
だし昆布は決して安いものではありません。昆布を採るのも、昆布を乾燥させるのも、かなりの重労働だそうです。しかも天候に左右され、採取した昆布を乾かしている最中に天気が崩れてくると短時間で一気に乾燥させることがかなわなくなり、品質が落ちてしまうのだそうです。しかもそれなりの味が出て品質が落ち着くまで一年以上、場合によっては2年、3年とかかるものなんです。安いわけはありません。
品質極上の昆布を好きなだけばんばん使えるか、できるだけ一回に使う量をおさえて良い味を効率良く引き出すか・・・。
本によって使う昆布の量にすごく差があるのも、こういうところが関係しているのかもしれません。
奥薗壽子は「もっと使える乾物の本―おいしさ・手軽さ新発見 食べ方・使い方170
ただでさえだし昆布なんて高いものを買ってきた日にゃなかなか思い切って使えません。高い昆布を買ってきて気後れしながら使うよりは、最初は安いものを買ってばんばん使った方が、もうちょっとこういう昆布が欲しいとだんだん自分の好みが分かってくるんじゃないだろうか、そういうふうにしてランクを少しずつ上げてゆけば好みの昆布に辿りつけるのでは・・・という内容です。
最初に一流のものを経験してしまうというのも一つの方法ですが、こういうふうに気軽に始められるところから自分の道を見つけていくというのは、非常にとっつきやすい。
安い昆布ならば、いろんな出汁のひき方も心置きなく試せるかもしれません。
最初のたたき台とする出汁のひき方も選び方は人によってまちまちでいいと思います。
とりあえず多数派の方法を選んでみる。
まずは自分の好きな料理人、料理研究家のやり方をまねてみる。
でも、最後に頼るのは自分の舌、家族の評価です。
だって、自分が喜ぶため、家族に喜んでもらうためのお吸い物、出汁なんですから。
その目的のためにはやはり試行錯誤と努力は欠かせないでしょう。
というわけで、昆布出汁に王道は無い・・・という結論でとりあえず〆させていただきます。
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