2009年05月20日

欧米ではどうして虫を食べないのか?

昆虫食の本を少しずつ読んでいますが、昆虫食が実際に行われている地域というと、東南アジアとかアフリカがよく出てきます。
日本も実は(少なくとも最近までは)昆虫食大国だったという記述もよく出てきます。
逆に昆虫食と無縁そうなのが欧米。

欧米では虫を食べるということはどういうふうに扱われてきたのか?

まず、Harold McGee「On Food And Cooking: The Science and Lore of the Kitchen」を調べてみます。
この本には実にさまざまな食材の知識が載っています。
でも、昆虫の食材は皆無でした。著者はアメリカ人。当然のことながらアメリカ食文化が土台となっています。

次に食の王国フランスはどうだろうか、と振り返ります。
少々古い文献ながら「ラルース料理百科事典〈4〉HAR~OLO (1979年)」を紐解くと「Insectes Comestibles(食用昆虫)」という項目が載っています。
ここには、まず「昆虫類は一般に嫌悪の対象となっている」という記述があります。もちろんおそらくこれはフランスを中心としたヨーロッパでの話でしょう。
続いて、アラブ、アジア、アフリカでは一部の昆虫を美味とみなし、逆に(ヨーロッパ人の好む)甲殻類への嗜好を変だと思うという記述が続きます。そして、ヨハネやヘブライ人が昆虫を食べていた話、旧約聖書に出てくる食べてもよい昆虫の話、古代ギリシア人、中国、メキシコなどの昆虫食の例が挙げられています。
フランスでは昆虫食はNGとされながらも、この記述はかなり公平な(?)グローバルな視線で書かれている印象を受けました。

野中健一「虫食む人々の暮らし (NHKブックス)」には、「ファーブル昆虫記」にカミキリムシの幼虫を試食する話が出てくることが紹介されています。古代ローマで礼賛されたという食材を体験してみようとファーブルが仲間と一緒に食するのですが、串焼きにして塩を振ったその幼虫は大変美味であったとか。
逆に言えば、ファーブルの生きていた文化では昆虫を食べるということはおそるおそるの実験であるほど、圏外の行動だったわけです。

梅谷献二「虫を食べる文化誌」には、「アメリカの食虫事情」という一項がもうけられています。
いわく「アメリカは現在「虫を食べない」有数の国」なんだそうです。
現在という限定つきなのは、先住民族や隣のメキシコには虫を食べる文化があるためです。
そんなアメリカでも虫を食べる試みを行ったり、昆虫食文化をひろめようと努力している人たちがいるのだとか。
ただ梅谷献二は、アメリカでの昆虫食の試行というのが、ミールワームなどが中心なことに疑問を持っているようです。
ミールワーム(コメゴミムシダマシという穀類を食害する甲虫の幼虫)は小鳥などペットの餌としてアメリカでは大量に売られているもので、昆虫食の文化を持つ他所の国では食材となっている例がないこのミールワームを昆虫食の中心に据えているのは、単に安価に大量に入手できる清潔な虫だからというだけに過ぎないようだ、美味しい昆虫食をつくるには素材はどうでもよく味付けでどうとにもなると思っているからではなかろうかと書かれています。アメリカの昆虫食には素材の昆虫の味を生かすようなものは少ないようだとも。

このように見てくると、古代ギリシャ、ローマ時代はともかく、それ以降の欧米は、基本的に昆虫食とは無縁の文化を築いてきたといえるでしょう。
昆虫食との接点というのもどこか観念的。
梅谷献二「虫を食べる文化誌」で紹介されているアメリカの昆虫食をひろめる運動も、動機は将来の食糧難に昆虫は有効な食材となるからというものらしいです。

なぜ、欧米、特にヨーロッパには、昆虫食が根付かなかったのか?
マーヴィン・ハリス「食と文化の謎―Good to eatの人類学」には、蛋白質を得るための効率という観点からこの問題に解答を与えています。
大型の脊椎動物がたくさんいるかいないか、獲りやすい昆虫がたくさんいるかいないかで地域を分けてみましょうというのが、このマーヴィン・ハリスの考え方の出発点です。ここで獲りやすい昆虫というのはある程度大きくて、群れをなしているもの。要するに一網打尽に獲ればかなりの量の蛋白質がゲットできるもの、を指します。
大型脊椎動物がたくさんいて、昆虫が少ない地域は、当然のことながら大型脊椎動物が食べる対象とみなされます。昆虫は獲る労力などを考えたら割に合わない食材なのです。
逆に大型脊椎動物があまりおらず、昆虫の多い地域は、昆虫が食材として重要になってきます。
それ以外の地域、大型脊椎動物も昆虫も多い地域、大型脊椎動物も昆虫も少ない地域は中間の地域です。

食と文化の謎―Good to eatの人類学」によると、ヨーロッパは大型脊椎動物が多いけれど昆虫の少ない地域です。自然と昆虫は食材の対象ではなくなってしまったというのがマーヴィン・ハリスの説。
そしてさらに嫌悪の対象となっていったと。

現在先進国のかなりの部分を占めている欧米が昆虫食に対して否定的なスタンスであるということは、世界の昆虫食に対する視線にも影響しているのかもしれません。
日本の戦後の昆虫食事情に、欧米の視点の影響がどれほど影響があったのか興味あるところです。

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